博多織 〜 一辺倒ではない、表情豊かな着物を織り成していきたい。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

博多織 〜 
一辺倒ではない、表情豊かな着物を織り成していきたい。

さまざまな色の糸の錘が並ぶ
▲さまざまな色の糸の錘が並ぶ
鎌倉時代の1241年、博多商人が宗から帰国した際に持ち帰った機織り技術がはじまりとされる博多織。京都の西陣織が緯糸で柄を現すのに対し、博多織は、経糸に太い緯糸を打ち込み、経糸を浮かすことで柄を織り成します。生地の特性としては、緯糸を、おさでしっかり打ち込むことで生まれる強さです。江戸時代、侍の刀をさしても緩まないキュッと締まる強さは、その機能性から献上品としても珍重されました。
そのような長い歴史のなか、緯糸を強く打ち込む博多織は、男性の仕事とされてきました。しかし近年では、女性の博多織伝統工芸士も増えています。

現在、博多織伝統工芸士会副会長を務める伴和子さん。伴さんが伝統工芸士試験に合格し、博多織伝統工芸士に認定されたのは平成5(1993)年のこと。平成20(2008)年3月現在、女性の博多織伝統工芸士は8名いますが、当時、まだ男性社会という意識が強く残るなか、伴さんが女性初の博多織伝統工芸士でした。

「博多織の特長は強さにあります。しかし、緯糸を打ち込む力の強さでは男性に到底適いません。ですから私は、博多織の技法を着物で生かすことにしたんです」と、伴さん。さまざまな色の緯糸を巧みに操り柄を織り成す「すくい織」や、細かな縮緬皺(ちりめんじわ)が豊かな表情を生む「さざなみ織」など、従来の型に収まらず自由な作風を生み出しています。

その自由闊達ながら繊細な作品づくりの背景には、水墨画から受けた影響が大きいと伴さんは言います。「墨一色で奥行きや世界観を表現する水墨画では、コンポジション(構成、組み立て)が何より大切です。また水墨画の先生から教えられた『どこを切り取っても作品としておもしろくなくてはならない』という考えが、作品づくりの根底にあります。着物は広げて飾った場合と、身にまとった場合では見え方が大きく違うものです。私は織り始める前、飾っても、着ても美しく見えるよう、あらゆる見え方を意識してデッサンして、完成イメージに向けて織っています」とのこと。

「おもしろいこと」を第一に、バランス感覚が生きた伴さんの作品には、若々しい博多織の息吹が感じられます。

  • 伴 和子(ばん・かずこ)
    伴 和子(ばん・かずこ)
    日本伝統工芸士会常任幹事。日本伝統工芸士会女性部会長。博多織伝統工芸士会副会長。
    女性伝統工芸士の存在を広く世に伝えると共に、次代の女性伝統工芸士育成に尽力している。
  • 匠ギャラリーにて『女性伝統工芸士展』
    2008年6月18日(水)〜23日(月)まで開催!
博多織
▲博多織
緯糸を通すのに使う杼
▲緯糸を通すのに使う杼
一定のリズムで織りを進めていく伴さん
▲一定のリズムで織りを進めていく伴さん
完成予想図が描かれたデッサンブック
▲完成予想図が描かれたデッサンブック