小石原焼 〜 使ってこそ映える伝統美に独自の世界を重ねていきたい。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

小石原焼 〜 
使ってこそ映える伝統美に独自の世界を重ねていきたい。

年季の入った登り窯。今は大壷などを焼く時に使われている
▲年季の入った登り窯。今は大壷などを焼く時に使われている
上野焼(あがのやき)と共に、福岡県を代表する焼物のひとつ小石原焼。江戸時代の前期、黒田藩藩主・黒田光之公が、伊万里より陶工を招き窯場を開いたのがはじまりとされています。茶陶として発展した上野焼と比べると、小石原焼では主に壷や瓶、徳利など、生活に根ざした雑器が焼かれ、その丈夫さから民衆に広く親しまれていきました。見た目の特長は、陶土の上に化粧泥という白い土をかけ、さまざまな技法で彫られた文様。半乾きの状態でいろいろな道具を使い、「刷毛目(はけめ)」、「飛びかんな」、「櫛目」など、今も変わらぬ技法で描かれた模様は、素朴な味わいを生んでいます。

小石原焼の窯元の長男として生まれ、佐賀県立有田工業高校、有田窯業大学校で焼物のあらゆる知識を学び、陶工の道に入った太田富隆さん。幼少期より土に触れ、小石原焼を日常のものとして慣れ親しんできた太田さんが小石原焼の特長を一言で表すならば「用の美」だとか。

「暮らしに密着した雑器であるからこそ、料理を盛った時、花を生けた時など、実際に用いた時に美しくなくてはならない」と太田さんは考えます。そんな太田さんの作陶にあたっての信念は、「10人中8人が認めてくれるものをつくる」こと。そして「手づくり」であることです。太田さんは、若い頃、アメリカやイギリスで学んだ技法を作品造りに活かしたり、小石原焼では珍しい青を基調とした作品を多く発表するなど、独自性に富んだものづくりを行っています。しかし、「新しい器づくりの挑戦と共に、小石原焼の歴代の陶工達が守ってきた昔ながらの技法や、使う人のことを考えたものづくりの精神は大切にしていきたいんです」とのこと。

土練りや成形、削り、素焼き、釉薬(ゆうやく)かけ、本焼きなど、作品の完成までに13もの工程がある小石原焼。現在、陶土づくりは組合が行い、各窯元に配布されていますが、それでも作品にかける手間と時間は相当なものです。しかし、その手間と、そこに人の思いがあるからこそ、素朴であたたかな小石原焼の魅力が生まれるのかもしれません。

  • 太田 富隆(おおた・とみたか)
    太田 富隆(おおた・とみたか)
    平成元年に作陶を開始。平成17年に4度目の日本伝統工芸展入選を果たし、日本工芸会の正会員となる。本年は小石原焼陶器組合青年部部長として、小石原焼及び小石原の活性化に力を尽くしている。
  • 匠ギャラリーにて『 和窯 夏を彩る器展』
    2008年7月14日(月)〜20日(日)まで開催!
    【初日12:00から 最終日16:00まで】
小石原焼
▲小石原焼
理想の模様を描けるよう、ゴムなどを独自に加工した櫛目
▲理想の模様を描けるよう、ゴムなどを独自に加工した櫛目
小石原焼の伝統的な技法のひとつ櫛目
▲小石原焼の伝統的な技法のひとつ櫛目
つくる器分の陶土から形成していく独自の作陶方法は、海外で得たもの
▲つくる器分の陶土から形成していく独自の作陶方法は、海外で得たもの