マルティグラス 〜 技を重ね、色を重ね、柔らかな表情を生み出したい。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

マルティグラス 〜 
技を重ね、色を重ね、柔らかな表情を生み出したい。

ガラスの塊を慣れた手つきで形成。写真はフクロウの制作場面
▲ガラスの塊を慣れた手つきで形成。写真はフクロウの制作場面
昭和63(1988)年に福岡県特産工芸品に指定され、工芸品としては比較的まだ歴史の新しい「マルティグラス」。多くの人にとって耳慣れない言葉かもしれません。ガラスづくりで、ひとつのガラスの上に別の色ガラスを重ねる(被せる)ことから「色被せガラス」と呼ばれる昔ながらの技法がありますが、「マルティグラス」はそれをオリジナリティ豊かに発展させたもの。「MULTIPLE LAYER GLASS(マルティプルレイヤーグラス)」の愛称で、性質の違う色ガラスを何層にも重ね合わせて作る多重積層ガラスを意味しています。一般的な色被せガラスはメイン色ともう一色ですが、マルティグラスでは、数種類の色ガラスを重ね、色と形状、そして見る角度の光の反射によって豊かに変化する表情を生み出すのです。

技法そのものの「マルティグラス」を工房名に持つ有限会社マルティグラスでは、ベテランのクラフトマン達が、伝統と高度な技術を融合させたマルティグラスづくりに日夜励んでいます。ガラス工芸暦27年の杉岡良紀さん。器からオーナメントまで、オールラウンドな技術を持っていますが、得意とするのは、マルティグラスならではの多彩な表情が魅力的なオーナメントづくり。「飾ってもらうのが前提だから、色もカタチも映えるもの。また、どれだけ柔らかな表情を生み出せるかが作品づくりの課題です」と杉岡さん。

作業時はオレンジの塊でしかないガラスを、長年の技と勘を頼りに仕上がりを思い描いて進める作品づくりは、まさに色との戦いだとか。1300度もの溶解窯に準備された7つの窯から、熱くアメ状になったガラスを鉄の棒へ球取りし、次々と色ガラスを自在に色着せしていく杉岡さん。素早い手つきで3色もの色ガラスを重ね、さらにガラスを砕いたカレットをアクセントに色を重ねながらハサミなどを使って形成して行きます。澄んだ色のなかに熱を残すガラスは、一見淡々とものづくりをこなす風でいて、ものづくりへの情熱を秘めたクラフトマンの様子にも似ているようでした。

  • 杉岡 良紀(すぎおか・よしき)
    杉岡 良紀(すぎおか・よしき)
    伝統的技法を駆使した作品を作る一方、革新的な作品作りにもチャレンジ。近年、技術と斬新な感性を融合させた独特な作品を発表している。九州クラフト展入選。西部工芸展入選。福岡県美術展入選。
  • 匠ギャラリーにて「炎の芸術 マルティグラス展」
    2008年8月4日(月)〜10日(日)まで開催!
    【10:00〜18:00(初日12:00から最終日16:00まで)】
マルティグラス
▲マルティグラス
溶解窯から、溶けたガラスを鉄棒に球取りする杉岡さん
▲溶解窯から、溶けたガラスを鉄棒に球取りする杉岡さん
ガラスを形成する際に使うハサミなど、使い慣れた道具が並ぶ
▲ガラスを形成する際に使うハサミなど、使い慣れた道具が並ぶ
高温の窯とガラス、そしてクラフトマン達の熱気で満ちた工房
▲高温の窯とガラス、そしてクラフトマン達の熱気で満ちた工房