染物 〜 自分が描いた絵を着る贅沢を自由な染め物で実感したい。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

染物 〜 
自分が描いた絵を着る贅沢を自由な染め物で実感したい。

刷毛や筆を使い柄部分を染めていく。図柄によってその回数は異なる
▲刷毛や筆を使い柄部分を染めていく。図柄によってその回数は異なる
ろうを防染剤に用いる染色技法のひとつ「ろうけつ染」。その歴史は古く、日本では奈良時代から臈纈染といわれ、正倉院の御物のなかにも多くの作品が残されています。その当時は蜜ろうが使われており、高価な染色だったためか、奈良時代を過ぎた頃に一度途絶えてしまいます。しかし、明治時代にインドネシアのバティク染の技法を取り入れた鶴巻氏によって復活。今日では一般的な、溶けたろうを筆に含ませて、図柄を描くろうけつ染の技法が確立され、多くの作家が染色技法としてろうけつ染を用い、広めたとされています。

ろうけつ染・手描き染・型染など、あらゆる技法を用いた染め物を行っている手染工房&ギャラリー「あとりえ艸」。昔ながらの技法に自由なアレンジを加えたろうけつ染を行っており、妹の淑恵さんが染めたものを、姉の加津恵さんが洋服やタペストリーなどに加工しています。おふたりが工房を立ち上げたのが31年前。「自分の描いたものを着たい」という思いが始まりでした。「染め物のいいところは、絵画と違い、作品を洋服として着られるというところですね。そしてろうけつ染のいいところは、自由度の高いところ。キャンバスに絵を描くように線も、色も自由なんです」と淑恵さん。事実、淑恵さんの手掛けられた作品は、一見ろうけつ染とわからないほどの細かな描写や絵画風の抽象的な図柄も多く見られます。「ろうけつ染は、ろうで描き、色を重ね、乾かして、またろうを重ね描く…という繰り返しです。制作にあたり、まず自分が描きたいものを思い描き、完成形に向け、どういう手順でどのようにすればカタチになるかを考えます。最後にろうを落とし切り、乾いた時に現れるろうけつ染ならではのヒビや色の濃淡、にじみなど、すべてが作品に深みをあたえてくれます」とのこと。作品ごとに思いもよらない仕上がりを見せてくれるろうけつ染の自由さが、淑恵さんの創作意欲を掻き立てているようでした

  • 萩本 淑恵(はぎもと・よしえ)
    萩本 淑恵(はぎもと・よしえ)
    京都市立芸術大学美術学部デザイン科卒業。1977年、姉の加津恵さんと共に染色工房艸設立。1979年に「あとりえ艸」に改名。あとりえ艸展、欧美国際美術賞展入選、知新会展入賞・入選など受賞歴も多数。
  • 匠ギャラリーにて「陶と染の二人展」
    2008年9月22日(月)〜28日(日)まで開催!
    【10:00〜18:00(初日12:00から最終日16:00まで)】
ろうけつ染
▲ろうけつ染
刷毛や筆を使い作業をする萩本さん
▲刷毛や筆を使い作業をする萩本さん
生地の白をくっきり残したい場所は2度、3度と同じ線を蝋描きする
▲生地の白をくっきり残したい場所は2度、3度と同じ線を蝋描きする
植物をモチーフにした図柄も多く、デッサンがストックされている
▲植物をモチーフにした図柄も多く、デッサンがストックされている