八女提灯 〜 手描きだからこそ伝えられる故人を偲ぶ想いがあります。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

八女提灯 〜 
手描きだからこそ伝えられる故人を偲ぶ想いがあります。

八女提灯
平成13年に国指定伝統的工芸品に指定された八女提灯は、1816年頃、荒巻文右衛門が素朴で簡単な絵を描いて作った「場提灯」が始まりと言われています。その後、八女の特産でもあった竹を用い、細い竹骨を一条螺旋状に巻き、厚紙を八女手漉き和紙に変えて内部が透視できるようにした提灯は、涼み提灯として人気を博しました。八女の土壌が育んだ技法と、その美しさは今も変わりません。

八女提灯は、木台を作る人、ひごを巻く人、張り師、絵師、塗り師など専属分業制のもと、ひとつの提灯が作られていますが、今回お訪ねしたのは、絵師の樋口万亀さんです。八女提灯の絵と言えば、昔ながらに一つひとつが手書きであること。また、一日で10から20個もの提灯を描き上げるという技法「速描」が特長です。一度に多くを描けるのは、夫婦での分業が成せる技。構図やメインの絵をご主人の万亀さんが描き、花の輪郭など細かな部分の絵付けを妻の千鶴子さんが行います。速描では、時に絵筆を二本同時に持って巧みに鳥の羽根や葉が描かれます。構図に関して、かつて、ひとつの火袋の中で風景の奥行きや広がりが描かれていましたが、昨今の八女提灯は二重の火袋を用いるのが主流です。「構図を考える時は、内火袋と外火袋、二つで一つの絵と考え、内と外で絵がかぶることがないように。また、絵の世界感、奥行きをいかに表現できるかを考えています」と万亀さん。八女提灯の絵師として28年。時代と共に描く絵の内容も変わってきたと言います。本来、納涼の意から秋の七草が描かれていた八女提灯ですが、最近は、故人の好きだった花や動物などを描くことも多いとか。「八女提灯のいいところは、手描きというところです。故人に対して思い入れの強いものを描けるのも手描きだからですし、いいことだと思います。提灯は、初めて死を迎えた人の帰り道を灯すためのものです。故人はもちろん、故人を偲ぶ人のことも想い、一筆一筆心を込めて描いています」とのこと。万亀さんの、時代や描く絵が違っても変わらない思いを感じることができました。

  • 樋口 万亀(ひぐち・ばんき)
    樋口 万亀(ひぐち・ばんき)
    本名、樋口孝一。八女提灯の火袋部門、八女提灯伝統工芸士会会長。襖絵師の経歴を持ち、襖絵でも幾度と描いた山水や龍を得意とし、当時習得したエアブラシで濃淡を印象的に用いた幽玄な世界を描きあげるのが特長。
  • 交流ギャラリー・匠ギャラリーにて、
    『飛躍する八女の伝統工芸と匠たちの技』
    2009年6月4日(木)〜6月7日(日)まで開催!
    【10:00〜18:00
    (最終日:交流ギャラリーは17:00、匠ギャラリーは16:00まで)】
卓上サイズの八女提灯
▲ニーズに合わせて、最近は描かれる絵が変わってきた他、サイズも、集合住宅用の小さなものが誕生。写真は卓上サイズの八女提灯
湾曲し、段がある提灯の骨の上でも、面相筆を使って滑らかな輪郭が描かれていく
▲湾曲し、段がある提灯の骨の上でも、面相筆を使って滑らかな輪郭が描かれていく
一筆一筆、丁寧に描かれている八女提灯。絹に描くため、筆の寿命は短いという
▲一筆一筆、丁寧に描かれている八女提灯。絹に描くため、筆の寿命は短いという
夫婦で提灯の絵師になって28年。互いの得意を生かした連携作業が「即描」を可能にする
▲夫婦で提灯の絵師になって28年。互いの得意を生かした連携作業が「即描」を可能にする
八女提灯
▲八女提灯