秋月和紙 〜 「伝統を絶やすことはできない」という使命感を持って技を磨く。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

秋月和紙 〜 
「伝統を絶やすことはできない」という使命感を持って技を磨く。

秋月和紙
戦国時代から城下町として栄えた秋月は「筑前の小京都」と呼ばれ、風情ある佇まいが魅力の町。豊かな自然に育まれた工芸品の数々も、昔と変わらず息づいています。今回は、そんな歴史の深い秋月で、昔ながらの手漉和紙を制作している「筑前秋月和紙処」の四代目、井上賢治さんを訪ねました。

江戸時代、髪を結う元結として重宝され、黒田五万石の歴代藩主に藩の産業として奨励されていた秋月和紙。その特長は、引きが強く、しなやかなところです。「和紙の原料として無くてはならないものに楮(こうぞ)がありますが、江戸時代は地元の楮を使って和紙づくりをしていました。台風などの激しい自然環境のもと育まれた九州産の楮は繊維が荒く、紙としてはの楮は繊維が荒く、紙としてはもちろん、紙をこより状にした秋月和紙の元結は丈夫だと当時重宝がられていたそうです。多い時は20軒程の和紙づくりを行う紙屋があったと聞いています」と井上さん。しかし、栄えていた秋月和紙にも最盛にかげりが見え、絶滅の危機がありました。「昭和40年代、実は当店も工房を閉め、秋月に紙屋の無い10年間があったんです。しかし、昔からあった地元の伝統工芸が、このまま町から無くなってしまうのは寂しいことだ…と周りの声が多く聞かれ、また自分自身も、ずっと残ってきた伝統の技の良さを実感した頃であり、『秋月和紙を絶やすことはできない』という思いから、父と共に復活させました」とのこと。

井上さんは、「使い手が書きやすい紙づくり」をめざすと共に、伝統を継ぐ者の熱い使命感から、楮に秋月ならではの葛や川茸を混ぜてのりに溶かし漉き入れた独特な和紙づくりを行っています。また、繊維が荒い楮を丁寧に叩きほぐし、さらに細かく裁断して柔らかくした上で、昔から伝わる小刻みに漉きを揺らす「流し漉き」の技法を駆使し、プリンタにも対応できるほど滑らかな和紙を提供するなど、秋月和紙の新たな可能性の開拓にも尽力しています。

  • 井上 賢治(いのうえ・けんじ)
    井上 賢治(いのうえ・けんじ)
    明治9年創業の紙屋の4代目。「筑前秋月和紙処」は、現在、秋月に唯一残る紙屋。和紙漉き体験も行っており、観光を通じて、秋月和紙の昔ながらの手法や素晴らしさを紹介している。
  • 匠ギャラリーにて、『秋月風我人展 結成10年 テーマ・・・表現』
    2009年9月8日(火)〜9月13日(日)まで開催!
    【10:00〜18:00(最終日16:00まで)】
和紙の主な原料となるクワ科の植物・楮(こうぞ)。樹皮部分が使われる
▲和紙の主な原料となるクワ科の植物・楮(こうぞ)。樹皮部分が使われる
楮を洗って晒し、煮出した後にできる繊維。たたいて柔らかくする
▲楮を洗って晒し、煮出した後にできる繊維。たたいて柔らかくする
簾桁を前後左右に揺らしながら、繊維を縦横に絡み合わせていく
▲簾桁を前後左右に揺らしながら、繊維を縦横に絡み合わせていく
和紙の強さや風合いを活かしたルームライトを「灯り屋本舗」と共同作成
▲和紙の強さや風合いを活かしたルームライトを「灯り屋本舗」と共同作成
表面が滑らかに仕上がった和紙は、書道家にも書きやすいと評判
▲表面が滑らかに仕上がった和紙は、書道家にも書きやすいと評判